帰宅したら、母がコタツで寝転がっていて、具合がよくない、と言いました。
「菜っ葉茹でるつもりだったのに、調子悪い………」
見ればシンクのところに畑から取ってきてざく切りした菜っ葉が積んであります。あとは沸騰したお湯に入れるだけです。
「ああ……茹でるだけ茹でちゃうか…」
と言う母に、私は優しく言ってあげました。
「一日置くくらい大丈夫なようだったら明日にしたら」
……ええ、私は菜っ葉茹でることひとつ、それくらいやったげるよと言ってやれない料理が苦手な人間です。
掃除も洗濯も面倒だけど嫌いではない私ですが、料理だけはちょっと……ダメです。
洗い物と米とぎは私の仕事ですが、食事は親に作ってもらっています。ありがたい…!
しかしひとつだけ、母より上手く作れるメニューがあります。
それは何かといいますと、オムレツです。
と言っても別に、私の作るオムレツが特別スバラオムレツなわけではありません。
ある日のことです。
「何か食べたいものあるー?」と訊かれた時、私は何気もなく「んじゃ、オムレツ」と答えました。
昔レストランで働いていたことのある私は、調理師さんが、フライパンにバターをさっと引き、卵を一つぽんと落として手早くかき混ぜ、ささっと形を整えてするっとお皿に盛り付けてくれたまかないの、中がとろりのプレーンオムレツが大好きでした。
しかし、よしわかった、と言った母は、熱したフライパンに、サラダ油を引き始めたのです…!
「え、ちょ、待っ、オムレツだよ!?」と言うと、母ははっとしたように「あっ、間違えちゃった!」と言い、その時はオムレツはお預けになりました。
しかしそんな出来事も記憶の彼方に過ぎ去った後日、どうやらオムレツらしいと思われる卵料理がテーブルに出され、食べてみると……
「えっと……何か混ぜた……?」「うん砂糖。あっ、塩だったっけ!?」
母はオムレツの作り方を知らなかったらしい……
うーん基本的に和食派だからな……
母の玉子焼きはとっても上手で大好きなのですが、そういえば私、母がオムレツ作ったの見たことなかった……
やはりオムレツは、バターだけの味付けが好きだな私は……
しかし母のプライドのため、そこは口には出さず、卵3個分ほどの量のそのオムレツを何とか……何とか……少し残してしまいましたが……食べました。
つーか料理もできない奴にそんな文句言われたくないよな普通(笑)。